本記事では、戦略的資産クラスとしての「金(Gold)」の商品特性を図やグラフを用いてわかりやすく解説します。需要シェアやボラティリティ、キャピタルゲインなど。

有限資産「金」の希少性
まずは「金とは何か」を理解するため、金が有限資産と呼ばれる理由を明らかにしたいと思います。
USGS(United States Geological Survey:アメリカ地質調査所)の資料「MINERAL COMMODITY SUMMARIES 2025」によると、2024年の金の年間生産量は約3,300トン、推定埋蔵量は約64,000トンとされています。
この年間生産量が今後も続き、かつ推定埋蔵量に変化がないと仮定すると、あと約20年足らずで採掘可能な金が枯渇する計算になります。
これが「金」が有限資産と呼ばれる理由であり、投資家から常に投資対象として見なされている大きな理由の一つと言えるでしょう。
年間生産量(2024年)
世界全体の金採掘量
推定埋蔵量
地球上に残る採掘可能な金
枯渇までの年数
現生産量・埋蔵量が不変の場合
埋蔵量枯渇シミュレーション(試算)
年間生産量 3,300トンが一定と仮定した場合の推定残余埋蔵量の推移
※ 試算値。実際の生産量・埋蔵量は変動します。
金の需要シェア — 価格形成との関係 —
金は「何に」、「どの程度」需要があるのでしょうか。
「金」に限らず、投資対象として貴金属に言及する際は需要状況が重要な要素になります。貴金属の価格は需要状況によって少なからず左右されるからです。
2025年の金の需要状況は、「投資」が43.5%、「宝飾品」が32.7%、「中央銀行」が17.3%、「産業」が6.5%を占めています。なお、「投資」の割合は2025年に跳ね上がっており、2024年の需要割合は25%程度です。
Demand Share Analysis
金の需要シェア内訳
-
43.5%
投資
-
32.7%
宝飾品
-
17.3%
中央銀行
-
6.5%
産業
特徴的な点は、「中央銀行」が需要の一定数を占めていることです。金と比較されることが多い「銀」には中央銀行による需要は見られません。
後述しますが、金は銀や株式と比べてボラティリティが低く、安定的に推移しています。一般的な投資家と比べて中央銀行は投機的な売買をする可能性は低いと考えられるため、一定の需要を中央銀行が占めていることは金価格の構造的な安定に寄与していると言えるでしょう。
また、「産業」需要が低いことも特徴で、金価格は比較的産業活動や景気動向に左右されにくいコモディティ資産と言えます。ちなみに、「銀」の産業需要割合は「59%」です。
金と株式のボラティリティ(変動性)
ここまで「金とは何か」という視点から金の希少性、需要シェアを解説してきました。ここからはタイトルにもある通り、「戦略的資産クラス」としての金の特徴を解説していきます。
大前提として、金は「積極的なキャピタルゲイン獲得」のための資産クラスではなく、「ポートフォリオの安定化」や「資産効率の向上」のための資産クラスと捉えることができます。
もちろん、キャピタルゲインの獲得を目指すことも可能ではありますが、金は株式や債券にない特徴を持つため、資産防衛の観点から「金」という資産を考えることも必要です。
この「資産防衛の観点」を念頭におき、まずは金と株式のボラティリティを見てみましょう。
Risk Analysis
10年ボラティリティ比較
グラフが示す通り、金は代表的な株価指数や同じ貴金属である銀と比べてボラティリティが低い資産です。
理由としては、有限な資産であることや、最近だと中央銀行による需要なども影響していると考えられています。
ボラティリティの低さは「ポートフォリオの安定化」や「投資効率の向上」に直結するため、資産防衛の観点においては、「金」を「資産を守りつつ、効率的に運用する」という戦略に基づく資産として位置づけることができます。
金と各資産クラスとの相関性
同様の観点に基づき、金と各資産クラスの相関性も見てみましょう。
Correlation Matrix Analysis
金と各資産の相関係数
| ゴールド | シルバー | 日本 株式 | 米国 株式 | 世界 株式 |
日本国債 | 米国債 | J-REIT | 米国 REIT |
|
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ゴールド | 1.00 | — | — | — | — | — | — | — | — |
| シルバー | 0.52 | 1.00 | — | — | — | — | — | — | — |
| 日本株式 | 0.15 | 0.10 | 1.00 | — | — | — | — | — | — |
| 米国株式 | 0.07 | 0.12 | 0.65 | 1.00 | — | — | — | — | — |
| 世界株式 | 0.13 | 0.20 | 0.66 | 0.97 | 1.00 | — | — | — | — |
| 日本国債 | 0.03 | 0.08 | -0.18 | 0.17 | 0.15 | 1.00 | — | — | — |
| 米国債 | 0.21 | -0.02 | -0.28 | 0.14 | 0.16 | 0.45 | 1.00 | — | — |
| J-REIT | 0.13 | 0.13 | 0.40 | 0.46 | 0.47 | 0.19 | -0.08 | 1.00 | — |
| 米国REIT | 0.14 | 0.15 | 0.34 | 0.78 | 0.78 | 0.32 | 0.37 | 0.48 | 1.00 |
金は各資産との相関係数が低く、同じ貴金属のシルバーを除き多くの資産に対して「弱い正の相関」を示しています。
相関係数の低い複数資産をポートフォリオに組むことで「ポートフォリオ効果」が発揮するため、ある程度投資効率を向上させることができます。
このように資産防衛の観点から考えると、資産としての「金」は「他資産クラスと合わせて保有することで投資効率を向上させる」資産であると考えることができます。
金と株式のキャピタルゲイン(値上がり益)
ここまで資産防衛の観点から「金」の特徴を解説してきましたが、キャピタルゲインを獲得できないわけではありません。実は過去のデータによると、株式と同等のパフォーマンスを記録しています。
Performance Analysis
年率リターン CAGR 比較
過去10年、20年それぞれで株式と同等のパフォーマンスを記録しており、金が単なる資産防衛のための資産ではなく、パフォーマンスにも期待できる資産であることが分かります。
ただし、あくまでも「積極的なキャピタルゲイン獲得」のための資産クラスではないことは忘れずにいましょう。
- 金の推定埋蔵量は約64,000トン。現在の生産ペースでは約20年未満で枯渇する試算。
- 「中央銀行」需要(17.3%)は価格の構造的安定に寄与。銀には見られない特徴。
- 「産業」需要が6.5%と低く、景気動向の影響を受けにくいコモディティ。
- ボラティリティ、各資産との相関性が低く、「資産防衛」の側面を持つ。